Hobby

短歌 大村 てる子

テーマ ~障がい者施設~

病む床に人恋ており園生に添い寝をすれば安らぎており
厨辺に煮え立つ粥の香りして病みし園生(こら)の食むを願うも
園生の寝居る学園静まりぬ寝顔たしかめそっと灯を消す
はかなくもたおれし乙女の墓碑なれど園生(こら)は知らざりひめゆりの塔
この園生(こら)と乙女のみたまに詣でれば今を生きゆく幸を思えり
君が夢小さな家族のだんらんと聞きつつ向う施設への道

テーマ ~ヘルパー(介護現場)~

病む床の食が進まぬとし君に命の糧をスプーンで運ぶ
動かざる冷たき足を手で包み我が温もりを伝えんとする
ゼコゼコと喀痰音で痰引けばうるむ瞳に安堵の深し
クレメンで胃ろうの滴下微調整命の糧をタッタッ流す
入院の長きを語る伸びし髪結わえてみれば幼き面に
CDに合わせて唄えばゆうちゃんも「さんぽ」の歌に口遊みつつ

テーマ ~ふるさと~

冬枯の岸辺を風の渡る時、葦が奏でるメロディーを聞く
茜さす北上の空に沈む陽が太古の原の風景映す
幼き日「浜がや」と呼びしこの景色思いで多き風匂い来る
海に向け葦野を渡る川風に緑ひと色の香りが満つる
震災で畑を耕すあるじ無く草野となりし初夏の故郷
鎮魂の祈りささげん大川小向えば淋し我が母校なり